
《タイトル》
「時風(じふう)」
《サイズ》
P4号(333 × 220mm)
《作品内容》
砂時計のシルエットに、桜と菊水紋様。
第十七回目
『晴れやかなひととき』
「春宵一刻値千金。花に清香、月にかげ」これは能楽の演目「田村(たむら)」の一節である。
「春の夜のひとときは千金の価値がある。花は清らかな香りを放ち、月はほのかにかすんでいる」という意味で、春の夜の美しさ・情緒・風雅なひとときの、かけがえのない価値を詠んでおり、「時は金なり」の元になっている。
「田村」は、武将の「坂上田村麻呂(さかがみの たむらまろ)」が鈴鹿山の賊を討伐すべく軍を進め、合戦の最中に千手観世音が出現し、その助勢により敵をことごとく滅ぼした様子を語り、これも観音の仏力であると述べる威風堂々とした勇ましいストーリーである。
「箙(えびら)」「屋島(やしま)」と合わせて三大勝修羅(かちしゅら)のひとつと人気の演目である。
金色の髭を蓄え、武人でありながら慈悲深さもあり、仏教への信仰も篤く、清水寺の建立に深く関わったとされることが、今でも愛される要因となった。
昔の武人はいつ人生を終えるかわからない戦いの世であっても文武両道であり、桜の咲き誇る雄大な時間と、一瞬の刹那のといった瞬間も惜しんで生きていたことが窺える。
絵の題材としても好まれているが、私も桜を描く時はこの謡を自然と口ずさんでしまう。
もうすぐ街並みも桜色に染まるころ。
慌ただしい日常にも暫し足を止めて、綺麗なものを見たり少し華やかな服装をしながら、巡り行く春の様子を味わいたい気持ちである。
東園基昭 拝