【東園基昭の「一粒万倍日記」2026.5.17/18】

【東園基昭の「一粒万倍日記」2026.5.17/18】




《タイトル》
 「竹林七賢 (ちくりんしちけん)」

《サイズ》
P50号(1167x803mm)
 
《作品内容》
牛のシルエットに、竹林と七賢人の紋様。
「竹林の七賢」とは、3世紀の中国・三国時代から晋の時代にかけて、俗世間を離れて竹林に集まり、老荘思想に基づいた自由な議論(清談)や酒宴を楽しんだとされる7人の知識人・芸術家の総称。

第二十五回目

『研鑽Emotion』


 感情とは、脳が外界の出来事に対して瞬時に生み出す、生理的・心理的な反応だ。喜び、悲しみ、怒り、恐れ、嫌悪、驚き。心理学者ポール・エクマンが示したこれら六つの基本感情は、文化や人種を超えて人類に共通する。それは私たちが何百万年もかけて磨き上げてきた、身体の警報システムであり、ナビゲーションである。
 現代社会は、このシステムを常にフル稼働させる。SNSの通知、予測不能なニュース、職場での人間関係。刺激は絶えず押し寄せ、感情は波のように繰り返す。特に「怒り」は厄介に見える。しかしそれは、脳が「理解できない」と感じたときに発する、もどかしさのサインだ。扁桃体が危険を察知し、ノルアドレナリンが心拍を上げる。その激しさゆえに、怒りは悪者扱いされやすい。
 だが、感情に良い・悪いはない。怒りは尊厳が侵されたことを教える合図であり、恐れは身を守る本能、悲しみは喪失と向き合う力だ。問題は感情そのものではなく、それとの付き合い方にある。
 「カチン」ときてから前頭葉が理性のブレーキをかけるまで、約6秒。その6秒を、深呼吸一つでやり過ごせることがある。
 感情を「研鑽(けんさん)」するとは、抑えることでも消すことでもない。日々の小さな変化に目を向け続けること。毎朝すれ違う花が少し開いていること、空の色が昨日と違うこと。そういった観察が「理解脳」を静かに育て、感情の波に飲み込まれにくい自分をつくる。
 感情は一過性だ。しかし、それを丁寧に受け取る習慣は積み重なる。怒りも、悲しみも、今日の自分を守ろうとした証だと気づいたとき、感情はもはや敵ではなく、誠実な相棒になる。
 喜びを誰かと分かち合うとき、人は最も人間らしくなる。その喜びを感じる力もまた、磨かれていく。


東園基昭 拝

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